人生という名の夏休み

旅、花、庭、畑…、備忘録代わりの写真日記

中央アルプス 空木岳・池山尾根(2)

自分にとって、体力のピークはいつだったのだろう…

年々わずかずつ衰えを感じながらも、日帰りで3,000m峰を往復する気力や体力は、同年代に比べても、
まだまだ勝っているだろう…という自負がどこかにあった。
2017年初の百名山に、中央アルプス・空木岳の往復を選んだのも、それを確かめたい気持ちからだった。

登山口から5時間でたどり着いた、空木平の避難小屋。

201707 utugi 501

ここから頂上までのコースタイムは45分。行く手には雪渓が点在するのが見える。

小屋の前には、雪渓を源流とする沢が流れ…

   201707 utugi 280
          201707 utugi 290

高山植物の花もあちこちに見られるなど、休息にちょうどよい場所である。
沢のしびれるほど冷たい水で顔を洗い、さらに進み始めると、雪渓が繰り返し、繰り返し現れる。

201707 utugi 506
         
アイゼンなしで進めるものの、やはり歩きにくく、なおかつ、端の方は雪解けが進み、時折、数十cmも
足が沈みこんでしまう。

さらには、時折の強い陽射しが反射光となり、目を開けるのも辛くなる。
何より、思いのほか空気が薄く、息が上がり、思うように進めなくなっている。

思えば、途中、ヨナ沢の頭と呼ばれる地点で共に休憩していた青年が、「空気が薄いですよね。」と
発した時には、半信半疑であったのだが、もはや、数歩進むだけで、呼吸を整えないといけないほどの
空気の薄さに感じる。

この時期特有のものなのか、車中泊の睡眠不足のせいか、自分の心肺機能の衰えなのかはわからない。
とにかく空気が薄く、2、3歩進んでは、立ち止まり、山頂を仰ぐ。
距離は進まず、時間だけが過ぎていく。

      201707 utugi 165-2

そんな辛い登りで、ふと、末期がんを患いつつ、東日本大震災の被災地の高校生を、富士登山に引率していた
田部井淳子氏のドキュメンタリーが思い浮かぶ。

もはや思いどおり動かない身体で富士に挑み、懸命に高校生を励ます田部井氏。

「一歩一歩進めば、必ず頂上にたどり着くことができるんだよ。」
「登ったところでしか味わえない空気や風景があるんだよ。」
「(登りきったことで)達成感や新たな発見があるんだよ。」

既に最期の時を覚悟した田部井氏の魂の言葉は、自分も心から共鳴するものであり、また、それらは
長い人生を生き抜く上でも、通じるところがあるように思う。

疲労困憊の中で、ぼんやりとそんなことを考えながら、結局、空木平からは標準の倍近い時間を要し、
ようやく稜線へたどり着く。

そこからさらに、ザレて歩きにくい道を一歩一歩、じりじりと進むと、やがて登るべき地面がなくなり、
空が大きくなる。

201707 utugi 300

ようやくたどり着いた空木岳山頂。時刻は午前11時半。

あいにくガスが湧き上がり、宝剣岳方面の稜線や、南アルプスの姿は眺められない。
それでも西側の木曽谷方向は視界が開け…

201707 utugi 310


南側に続く、南駒ヶ岳方面への縦走路が、ガスの間に見え隠れする。

201707 utugi 505

ひとしきり写真を撮り終え、昼食を摂ったものの、蓄積した疲労はなかなか消えない。

山頂まで登りきったら、下らなければならないという自明の理を前に、これまで感じたことのない不安を覚え始める。

普段どおりなら、標準コースタイム4時間5分に、通行止の迂回による30分を加えても、5時までには車に戻れる
とは思うものの、今回ばかりは、途中で動けなくなるのでは…などと不安がよぎり、わずか15分足らずで頂上を
あとにする。

帰路は、雪が多く難儀した空木平経由のルートを避け、駒石などの巨岩が並ぶ稜線を下る。

201707 utugi 320

先ほどまで苦しめられた息苦しさも吹き飛び、快適に進む。

とはいえ、大地獄、マセナギ、水場と来た道を戻り、歩行時間が9時間を超えたあたりから、古傷の右ひざが
痛みだす。

歩幅を変えたり、スピードを緩めたり、だましだまし歩き続けると視界が開け、本来の林道終点に出る。

201707 utugi 508

通常なら、ここで車に乗り込むことができるものの、ここからさらに30分下らなければならない。
これが、精神的、肉体的にかなりこたえる。

最後は、足をひきずるように登山口に戻り、林道を登り返して駐車場へ。

そこには、朝の混雑が嘘のような静寂の光景が広がる。

201707 utugi 507

時刻は午後4時20分。
出発から11時間余りの日帰り登山は、ようやく幕を閉じた。



 
  1. 2017/07/15(土) 17:02:01|
  2. 百名山 【関東・甲信越】
  3. | コメント:2
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コメント

コメントありがとうございました。こちらに返信させてくださいね。
虫養い、知らなくて検索してみました。小腹を落ち着かせるために軽く食事をとることを言うんですね。お腹の虫を「まあまあ」となだめるような。素敵な言葉ですね~。ホント、どんどん言葉が減っていく(いや、変わっていく)んだな・・・。
前回からの山の写真を見させてもらってますが、体力、いりますね。カメラ機材も担いでいらっしゃるんですよね?
でも、その代わりに得られるものも、倍くらいありそうですね。お疲れ様でした!
  1. 2017/07/16(日) 07:32:45 |
  2. URL |
  3. 馬場亜紀 #-
  4. [ 編集 ]

馬場亜紀さん、返信遅くなりスイマセン

「虫養い」という言葉、自分は、高田郁の短編小説を
NHKのラジオで朗読されていたのを聴いて、初めて
知りました。
男親が持つ、息子や孫への慈しみを考えさせられる
作品でした。

関西本来の美しい言葉、時代とともに、忘れ去られて
いくのは寂しい限りです。

山の写真、全て名刺サイズのコンデジで撮ったものです^^:
デジイチは重くて、もう数年来、使っていません(笑)
  1. 2017/07/18(火) 22:12:09 |
  2. URL |
  3. HAM1826 #T8stxXjA
  4. [ 編集 ]

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